猫の慢性腎臓病について
2025/08/02
こんにちは!
愛玩動物看護師の菅野(かんの)です。
今回は猫の慢性腎臓病について!
ねこちゃんの飼い主さんは、ねこちゃんは腎臓が悪くなりやすいと聞いたことがあるかと思います。
うちのねこちゃん(のび、茶トラ男子、推定19歳)も慢性腎臓病で、
数年前からお薬を飲んで療法食を食べています。
1年前まで一緒に暮らしていたねこちゃん(菊、サビ猫、享年19歳)も慢性腎臓病でした。
死因は腎臓病ではなかったのですが、前の飼い主さんと暮らしていた時からずっと腎臓の数値が良くなかったそうです。超音波検査で腎臓の形を確認すると萎縮しているし形もとても歪でした。
高血圧にもなり、血圧を下げるお薬も飲んでいました💊
【腎臓ってどんな働きをしているの?】
腎臓は血液から尿を作って老廃物を排泄しています。
血液の中には、
水分
血球成分(白血球、赤血球、血小板)
タンパク質
ブドウ糖
ミネラル
老廃物
など…
色々なものが含まれています。
この中から老廃物を選択して排泄をおこなっています。
体液の恒常性を維持し、体の水分や電解質の調整もおこなっています。
他に
赤血球を作る
血圧を調整する
ビタミンD3を活性化させる
などの働きもあります。
【なぜ、ねこちゃんは腎臓が悪くなりやすいの?】
祖先は砂漠で暮らすリビアヤマネコと言われています。
リビアヤマネコは水が少ない環境で生活をしていました。
水が少ない=尿が濃くなります。
頑張って腎臓が尿を濃縮しているので、腎臓に負担がかかり、
これが腎臓が悪くなる原因とされています。
↑こちらがリビアヤマネコのイメージイラストです🐱
また、血液中にあるAIMというタンパク質の働きが、
他の動物よりもよくないという理由もあるそうです。
AIMについてはまた後日投稿させていただきます!
【慢性腎臓病のステージ分類とは?】
慢性腎臓病はIRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)でステージ分類がされています。
ステージ1
残存する腎機能:99〜34%
血中クレアチニン※:<1.4(犬)、<1.6(猫)
SDMA※:<18(犬、猫)
高窒素※血症の有無:高窒素血症なし
ステージ2
残存する腎機能:33〜26%
血中クレアチニン:1.4〜2.8(犬)、1.6〜2.8(猫)
SDMA:18〜35(犬)、18〜25(猫)
高窒素血症の有無:軽度の高窒素血症
ステージ3
残存する腎機能:25〜10%
血中クレアチニン:2.9〜5.0(犬、猫)
SDMA:36〜54(犬)、26〜38(猫)
高窒素血症の有無:中程度の高窒素血症
ステージ4
残存する腎機能:<10%
血中クレアチニン:>5.0(犬、猫)
SDMA:>54(犬)、>38(猫)
高窒素血症の有無:重度の高窒素血症
※血中クレアチニン
血液中に含まれる筋肉の代謝からできる老廃物。
※SDMA(対称性ジメチルアルギニン)
タンパク質が分解される際に血中に放出される物質。
※血中尿素窒素(BUN)
血液中の尿素に含まれる窒素量。
タンパク質代謝で生成された尿素=老廃物。
クレアチニンもSDMAも尿素も、正常であればほとんど尿中に排泄される。腎臓の機能が低下すると尿中に排出することができず血液中に残る。なので、腎臓の機能を調べるマーカーとなっている!
【尿検査も重要です!】
腎臓の機能が低下すると、尿を十分に濃縮できなくなります。
ちゃんと濃縮できているか確認するためには、尿の比重を確認します。
ねこちゃんの腎臓が悪くなる経過として1番最初に出ると言われているのが、「尿濃縮能の低下」です。
尿比重
犬 >1.050、猫 >1.060
→異常な濃縮(脱水など)
犬 >1.030、猫 >1.035
→正常
犬 1.013〜1.029、猫 1.013〜1.034
→濃縮であるが十分でない
犬猫 1.008〜1.012
→濃縮がない(持続的な場合)
また、慢性腎臓病の悪化要因の中に、「糸球体性蛋白尿」があります。
本来であれば、蛋白は腎臓の糸球体というところで
血液を濾過し尿を作る際に体内に留まるようになっています。
しかし腎臓の機能が低下すると蛋白が漏れ出てしまい、尿中に蛋白が出てきます。
尿中に蛋白が出ているか試験紙で調べる方法もおこないますが試験紙での検査だけではなく、尿タンパクが有意なものなのかを調べるためにUPC(尿タンパククレアチニン比)をチェックします。
UPCは尿タンパク濃度をクレアチニン濃度で割ったものであり、尿の濃い薄いに関わらず尿に漏れたタンパク質が有意なものかどうかの判定に必要な検査です。
UPC
犬猫 <0.2
→非タンパク尿
犬 0.2〜0.5、猫 0.2〜0.4
→境界的なタンパク尿
犬 >0.5、猫 >0.4
→タンパク尿
【慢性腎臓病の主な悪化要因とは?】
•糸球体性蛋白尿
•全身性高血圧
•尿路感染症
•高リン血症
•貧血
【どのように腎臓病は進行するの?】
悪化要因を踏まえて、犬と猫の慢性腎臓病のお話しです。
犬の慢性腎臓病と猫の慢性腎臓病は、犬と猫の腎臓の構造が異なるため
身体に出てくる異常の順番が異なります。
犬の場合は尿蛋白のところでお話しした「糸球体」に問題が起きやすいため、「蛋白尿」から始まります。
慢性腎臓病の悪化要因である「糸球体性蛋白尿」です。
蛋白尿、全身性高血圧
↓
高窒素血症
↓
高リン血症、貧血など
上記のような経過をたどります。
犬は初期から悪化要因がでるため、進行が早いとされています。
今回は猫の慢性腎臓病のお話しなので、最初にうちのねこちゃんの話だけだったのですが、
実は4年前に亡くなったうちのわんちゃんのアッシュ(ミニチュアダックス、享年14歳)も
慢性腎臓病でした。発覚してから進行が早かったです。
おうちで皮下点滴を数日おきにおこなっていました。
ご飯も療法食にしなくちゃ!と思いましたが、食べてくれず…結局美味しいごはんをネットや
ペットショップに行って買って色々試して、どれなら食べるのかな〜とずっと悩む毎日でした。
療法食が1番いいのはわかっていますが、食べる事は生きる事なので、
本人が毎日楽しく生きられればいいかな!と思い、獣医さんと話した上でそうしていました。
病気になる前はなんでも美味しく食べる犬で決まったごはんしか与えたことがなかったので、
こんなに美味しいものあったんだ〜✨とキラキラした顔をしていたアッシュを
たまに思い出してはひとりで微笑んでます笑
猫の場合は尿比重のところでお話しした「尿濃縮能の低下」からはじまります。
これは、腎臓で水分の再吸収をおこなう「尿細管」という場所に問題がおきやすいためです。
尿濃縮能の低下
↓
高窒素血症
↓
高リン血症、貧血など
上記のような経過をたどります。
【最後に】
猫の慢性腎臓病の罹患率は
15歳以上で約80%、5歳未満で約40%
と言われています。
(Christina et al. 2014)
残念ながら、一度慢性腎臓病になると、元の腎臓の状態に戻ることはないと言われています。
腎臓がこれ以上悪くならないように、お薬や療法食を与えます。
状況によっては皮下点滴をすることもあります。
腎臓が悪くなるとごはんの食べが悪くなることが多いです。当院では色々なメーカーの腎臓の療法食を取り扱っております。スタッフまでお声かけください!
また、慢性疾患に伴う食欲不振や体重減少を示す猫ちゃんの体重増加に効果的なサプリメントも
取り扱っております。美味しい味の液体です♪
ねこちゃんの健康診断、通年実施しております。
健康診断したことない、したことあるけど1年以上前…という方、
一度やってみてはいかがでしょうか??
お散歩に毎日行くわんちゃんと違って、お外に行く=病院となり、
キャリーバッグを持つだけで押し入れの奥に隠れてしまうなんて話をよく聞きます💦
なかなか連れてくるのにも一苦労のおうちもあるとは思います🥺
病院スタッフはねこちゃんに寄り添い、無理のないように検査を行うことを心掛けています!
ぜひ当院にご相談ください!
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みたかマロン動物病院
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東京都三鷹市野崎4-7-1 マロンテラス2階
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三鷹で犬の診療を行います
三鷹で猫の様々な不調に対応
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